6.建設業許可の「社会保険加入」要件を完全解説!適用事業所の判定と加入確認書類の実務



はじめに


建設業許可の6要件のうち、第6要件が「適切な社会保険への加入」です。平成24年11月の建設業法改正により、社会保険加入が許可要件に追加され、令和2年10月からは、未加入の場合は許可・更新を認めない厳格な運用となっています。


社会保険加入要件は、建設業における労働者の処遇改善、社会保険制度の健全化を目的としており、建設業で働く人々の雇用環境を守るための重要な要件です。


具体的には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つの保険について、適用事業所となるべき場合は、新規適用事業所の届出を行っていることが必要です。ただし、一人親方や家族経営等、適用除外となるケースもあり、個々の事業所の実態に応じた判断が必要です。


本記事では、新人行政書士が社会保険加入要件を正確に理解し、顧客に適切なアドバイスができるよう、3つの保険の適用基準、適用除外のケース、加入確認書類の実務まで、詳しく解説します。



社会保険加入要件


この記事で使う主な書式


社会保険加入要件の確認には、「(特典付き)行政書士開業セット」の中の以下の書式と添付書類を使用します。


社会保険加入状況を記載する書式


  • 016 健康保険等の加入状況(様式第7号の3) - 営業所ごとの社会保険加入状況を記載、適用事業所か適用除外かを明示


加入確認のための添付書類


  • 健康保険証の写し - 事業所名、保険者名、記号・番号が記載されたもの
  • 年金事務所等発行の資格取得届出確認書等 - 健康保険・厚生年金保険の適用事業所であることを証明
  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し - 雇用保険の加入を証明


要件確認用チェックリスト


  • チェックリスト001(一般建設業許可要件チェックリスト)の該当部分
  • チェックリスト002(特定建設業許可要件チェックリスト)の該当部分


社会保険加入要件は、「適用事業所なのか、適用除外なのか」の判断が重要です。誤って適用除外と判断すると、許可が受けられないだけでなく、後日の加入指導の対象となる可能性があります。


1. 社会保険加入要件とは


社会保険加入要件


1-1. 社会保険加入要件の趣旨


建設業法では、建設業許可の要件として、適切な社会保険への加入を義務付けています。


なぜ社会保険加入が必要か?


建設業は、長年にわたり社会保険未加入の事業所や労働者が多く存在し、労働者の処遇や将来的な年金受給に問題がありました。また、社会保険に加入している事業所と未加入の事業所との間で、コスト面での不公平が生じていました。


このため、建設業許可制度において社会保険加入を要件とすることで、建設業における社会保険加入を促進し、労働者の処遇改善と公平な競争環境の確保を図っています。


1-2. 令和2年10月からの厳格化


改正の経緯:


平成24年11月の建設業法改正で社会保険加入が許可要件に追加されましたが、当初は「加入の努力義務」という位置づけでした。しかし、令和2年10月1日からは、適用事業所であるにもかかわらず社会保険に未加入の場合は、許可・更新を認めないという厳格な運用となりました。


実務への影響:

  • 新規許可申請:未加入の場合は許可されない
  • 更新申請:未加入の場合は更新されない
  • 業種追加等:未加入の場合は認められない


1-3. 対象となる3つの保険


社会保険加入要件で対象となる保険は、以下の3つです。


  1. 健康保険(全国健康保険協会管掌健康保険または健康保険組合)
  2. 厚生年金保険
  3. 雇用保険


これらの保険について、適用事業所となるべき場合は、新規適用事業所の届出を行っている必要があります。


社会保険加入要件


2. 適用事業所の要件


2-1. 健康保険・厚生年金保険の適用事業所


原則:


法人の事業所は、常時使用する従業員の人数にかかわらず、健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。


適用事業所となる事業所:

  • 法人の事業所(株式会社、有限会社、合同会社等)
  • 個人事業所で常時5人以上の従業員を使用する事業所


適用除外となる事業所:

  • 個人事業所で常時使用する従業員が5人未満の事業所


「常時使用する従業員」とは:

  • 正社員、パート・アルバイト含む
  • 2ヶ月以内の期間を定めて雇用される者、季節的業務に従事する者等は除く
  • 事業主本人、事業主と同居する親族のみで事業を行っている場合は含まれない


社会保険加入要件


2-2. 雇用保険の適用事業所


原則:


労働者を1人でも雇用していれば、雇用保険の適用事業所となります。


適用事業所となる事業所:

  • 法人・個人を問わず、労働者を1人でも雇用している事業所


適用除外となる事業所:

  • 事業主のみ、または事業主と同居の親族のみで事業を行っている事業所


「労働者」とは:

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある者


社会保険加入要件


3. 3つの保険の詳細


3-1. 健康保険


適用対象:

  • 法人の事業所:強制適用(従業員数にかかわらず)
  • 個人事業所:常時5人以上の従業員を使用する場合は強制適用


加入手続:

  • 年金事務所または健康保険組合に新規適用届を提出


確認書類:

  • 健康保険証の写し(事業所名が記載されたもの)
  • 年金事務所発行の資格取得届出確認書


3-2. 厚生年金保険


適用対象:

  • 健康保険と同じ(健康保険と厚生年金保険は一体で加入)


加入手続:

  • 年金事務所に新規適用届を提出


確認書類:

  • 年金事務所発行の資格取得届出確認書
  • 厚生年金保険の領収書(保険料納付の証明)


3-3. 雇用保険


適用対象:

  • 労働者を1人でも雇用している事業所


加入手続:

  • ハローワークに保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届を提出


確認書類:

  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し
  • 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書


社会保険加入要件


4. 適用除外のケース


社会保険への加入が義務付けられていない(適用除外の)ケースを確認します。


4-1. 一人親方(事業主のみ)


状況:

  • 法人または個人事業主が、従業員を雇用せず、事業主のみで事業を行っている


判定:

  • 健康保険・厚生年金保険:適用除外
  • 雇用保険:適用除外


確認方法:

  • 016(様式第7号の3)で「適用除外」と記載
  • 給与支払の実態がないことを確認


社会保険加入要件F


4-2. 家族経営(事業主と同居親族のみ)


状況:

  • 事業主と同居の親族のみで事業を行っている


判定:

  • 健康保険・厚生年金保険:適用除外
  • 雇用保険:適用除外


確認方法:

  • 016(様式第7号の3)で「適用除外」と記載
  • 同居親族であることを確認(住民票等)


注意点:

  • 同居していない親族を雇用している場合は、その親族は労働者として扱われ、適用対象となる可能性がある


社会保険加入要件G


4-3. 個人事業所で従業員5人未満


状況:

  • 個人事業所で、常時使用する従業員が5人未満


判定:

  • 健康保険・厚生年金保険:適用除外
  • 雇用保険:適用対象(労働者を1人でも雇用していれば)


確認方法:

  • 従業員数を確認
  • 健康保険・厚生年金保険は適用除外、雇用保険のみ加入


社会保険加入要件


4-4. 法人で従業員がいない場合


状況:

  • 法人で、取締役のみで事業を行っており、従業員(使用人兼務役員含む)がいない


判定:

  • 健康保険・厚生年金保険:原則として適用対象(法人は強制適用)
  • 雇用保険:適用除外(労働者がいないため)


実務のポイント:

  • 法人の場合、従業員がいなくても、代表取締役は健康保険・厚生年金保険の被保険者となる
  • ただし、取締役が他社で社会保険に加入している場合等、実務上の扱いは複雑なため、年金事務所に確認が必要


5. 加入確認書類


5-1. 健康保険・厚生年金保険の確認書類


主な確認書類:


1. 健康保険証の写し

  • 事業所名(申請者名)が記載されていること
  • 保険者名(全国健康保険協会、○○健康保険組合等)が記載されていること
  • 被保険者本人のもの(扶養家族のものは不可)

【注意!】
2025年12月1日で、従来の健康保険証の有効期限が一斉に満了します。
その後はマイナ保険証・資格確認書・標準報酬決定通知書等、各都道府県が最新手引きで指定する書類での確認となります。


2. 年金事務所発行の資格取得届出確認書

  • 新規適用事業所の届出を行った際に年金事務所が発行
  • 「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」の控え


3. 保険料の領収書

  • 直近の保険料納付を証明


実務のポイント:

  • 健康保険証は、申請者(法人または個人事業主)の事業所名が記載されているものが必要
  • 代表者が他社の健康保険に加入している場合は、自社の健康保険に切り替える必要がある


社会保険加入要件


5-2. 雇用保険の確認書類


主な確認書類:


1. 労働保険概算・確定保険料申告書の写し

  • 労働基準監督署に提出した申告書の控え
  • 事業所名、労働保険番号が記載されていること


2. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書

  • ハローワークが発行
  • 従業員の雇用保険加入を証明


3. 労働保険料の領収書

  • 保険料納付を証明


実務のポイント:

  • 労働保険概算・確定保険料申告書は、毎年提出が必要
  • 直近年度のものを添付


社会保険加入要件


5-3. 適用除外の場合の書類


適用除外の場合:

  • 016(様式第7号の3)に「適用除外」と記載
  • 適用除外の理由を明記(「従業員がいないため」「個人事業所で従業員5人未満のため」等)


添付書類:

  • 基本的に不要
  • ただし、審査側から求められた場合は、以下を提出

    • 給与台帳(従業員がいないことの証明)
    • 住民票(家族経営の場合、同居を証明)


社会保険加入要件


6. 様式第7号の3の記入方法


6-1. 016 健康保険等の加入状況(様式第7号の3)


記載内容:


営業所ごとに記載:

  • 営業所の名称
  • 営業所の所在地


保険ごとの加入状況:

  • 健康保険:加入 / 適用除外
  • 厚生年金保険:加入 / 適用除外
  • 雇用保険:加入 / 適用除外


加入している場合:

  • 保険者名(健康保険組合名、全国健康保険協会等)
  • 事業所整理記号・事業所番号(健康保険・厚生年金保険)
  • 労働保険番号(雇用保険)


適用除外の場合:

  • 適用除外の理由(「従業員がいないため」等)


6-2. 記入例


ケース1:法人で従業員5名


営業所名:本店
所在地:東京都○○区○○


健康保険:加入
保険者名:全国健康保険協会
事業所整理記号・事業所番号:12-345678


厚生年金保険:加入
事業所整理記号・事業所番号:12-345678


雇用保険:加入
労働保険番号:1234-567890-1


ケース2:個人事業所で従業員2名


営業所名:○○建設
所在地:埼玉県○○市○○


健康保険:適用除外
理由:個人事業所で常時使用する従業員が5人未満のため


厚生年金保険:適用除外
理由:個人事業所で常時使用する従業員が5人未満のため


雇用保険:加入
労働保険番号:1234-567890-1


ケース3:一人親方(法人・従業員なし)


営業所名:本店
所在地:神奈川県○○市○○


健康保険:適用除外
理由:従業員がいないため


厚生年金保険:適用除外
理由:従業員がいないため


雇用保険:適用除外
理由:従業員がいないため


7. 実務ケーススタディ


実際の事例を通じて、社会保険加入要件の確認プロセスを学びましょう。


ケース1:株式会社(従業員10名)


顧客の状況:

  • 株式会社
  • 代表取締役1名、従業員10名
  • 営業所:本店のみ


確認プロセス:


1. 適用事業所の判定

  • 法人なので、健康保険・厚生年金保険は強制適用
  • 従業員がいるので、雇用保険も強制適用


2. 加入状況の確認

  • 健康保険・厚生年金保険:年金事務所に新規適用届を提出済み
  • 雇用保険:ハローワークに保険関係成立届を提出済み


3. 使用書式:

  • 016(様式第7号の3)に「加入」と記載
  • 保険者名、事業所番号、労働保険番号を記載


4. 添付書類:

  • 健康保険証の写し(代表取締役のもの)
  • 年金事務所発行の資格取得届出確認書
  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し


ポイント:
法人の場合、従業員数にかかわらず健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。


社会保険加入要件


ケース2:個人事業主(従業員3名)


顧客の状況:

  • 個人事業主
  • 本人と従業員3名
  • 営業所:本店のみ


確認プロセス:


1. 適用事業所の判定

  • 個人事業所で従業員5人未満なので、健康保険・厚生年金保険は適用除外
  • 従業員がいるので、雇用保険は強制適用


2. 加入状況の確認

  • 健康保険・厚生年金保険:適用除外
  • 雇用保険:ハローワークに保険関係成立届を提出済み


3. 使用書式:

  • 016(様式第7号の3)に記載

    • 健康保険・厚生年金保険:「適用除外」(理由:個人事業所で従業員5人未満)
    • 雇用保険:「加入」


4. 添付書類:

  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し


ポイント:
個人事業所で従業員5人未満の場合、健康保険・厚生年金保険は適用除外ですが、雇用保険は加入が必要です。


社会保険加入要件


ケース3:一人親方(法人・従業員なし)


顧客の状況:

  • 株式会社(一人会社)
  • 代表取締役1名のみ、従業員なし
  • 営業所:本店のみ


確認プロセス:


1. 適用事業所の判定

  • 法人なので、原則として健康保険・厚生年金保険は強制適用
  • ただし、従業員がいないため、実務上の扱いは年金事務所に確認が必要


2. 加入状況の確認(年金事務所に確認)

  • 代表取締役が他社で社会保険に加入している場合等、ケースバイケース
  • 一般的には、代表取締役1名でも適用事業所として届出が必要


3. 使用書式:

  • 016(様式第7号の3)に記載
  • 年金事務所の指示に従い、「加入」または「適用除外」を記載


ポイント:
法人の一人親方の場合、社会保険の扱いは複雑です。年金事務所に事前に確認することが重要です。


ケース4:家族経営(事業主と配偶者のみ)


顧客の状況:

  • 個人事業主
  • 本人と配偶者(同居)の2名のみ
  • 営業所:本店のみ


確認プロセス:


1. 適用事業所の判定

  • 事業主と同居親族のみなので、健康保険・厚生年金保険は適用除外
  • 労働者がいないので、雇用保険も適用除外


2. 使用書式:

  • 016(様式第7号の3)に「適用除外」と記載
  • 理由:「同居親族のみで事業を行っているため」


3. 添付書類:

  • 原則不要(審査側から求められた場合は住民票等)


ポイント:
事業主と同居親族のみの場合、すべての保険が適用除外となります。


社会保険加入要件


まとめ


本記事では、建設業許可の第6要件である社会保険加入要件について詳しく解説しました。


押さえるべき重要ポイント


令和2年10月から厳格化

  • 適用事業所で未加入の場合は許可・更新不可


対象となる3つの保険

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険


適用事業所の判定

  • 法人:従業員数にかかわらず健康保険・厚生年金保険は強制適用
  • 個人事業所:常時5人以上の従業員がいる場合は強制適用
  • 雇用保険:労働者を1人でも雇用していれば強制適用


適用除外のケース

  • 一人親方(事業主のみ)
  • 家族経営(事業主と同居親族のみ)
  • 個人事業所で従業員5人未満(健康保険・厚生年金保険のみ)


加入確認書類

  • 健康保険証の写し
  • 年金事務所発行の資格取得届出確認書
  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し


様式第7号の3の記入

  • 営業所ごとに記載
  • 加入 / 適用除外を明記
  • 適用除外の場合は理由を記載


実務で成功するための必須ツール


社会保険加入要件の確認と証明には、以下の書式が不可欠です:


要件確認:

  • チェックリスト001またはチェックリスト002(社会保険加入部分)


証明書式:

  • 016 健康保険等の加入状況(様式第7号の3)


添付書類:

  • 健康保険証の写し
  • 年金事務所発行の資格取得届出確認書
  • 労働保険概算・確定保険料申告書の写し


これらの書式を正確に作成し、適切な添付書類を揃えることが、審査通過の鍵です。特に、「適用事業所なのか、適用除外なのか」の判断を誤ると、許可が受けられないだけでなく、後日の行政指導の対象となる可能性があります。


20年以上新人行政書士に使われ続けている「行政書士開業セット」の書式集については、以下のページで詳しく解説しています。


これらの資料には、016(様式第7号の3)の詳細な記入例、適用事業所の判定方法、加入確認書類の収集手順など、実務で即使えるノウハウが凝縮されています。


社会保険加入要件


次に読むべき記事


社会保険加入要件を理解したら、次は申請書類の作成実務を学びましょう:

  • 記事7:申請書類の作成手順と提出実務
  • 記事8:変更届・更新申請の実務


 
独学の前に→「おすすめの実務講座
基礎を理解した後は→「おすすめの実務本