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はじめに
建設業許可の6要件のうち、第3要件が「請負契約に関する誠実性」、第4要件が「欠格要件に該当しないこと」です。これらは、建設業者として最低限の適格性を確保するための要件であり、すべての許可申請において厳格に審査されます。
誠実性要件は、請負契約の締結や履行に際して不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者を排除するための要件です。
欠格要件は、過去の法令違反歴、刑罰歴、暴力団関係者等を排除するための要件で、非常に細かく規定されています。
これらの要件は、形式的な確認だけでなく、法人の場合は役員等全員、個人事業主の場合は本人と支配人について、すべて確認する必要があります。また、確認すべき事項が多岐にわたるため、漏れなくチェックする仕組みが不可欠です。
本記事では、新人行政書士が誠実性・欠格要件を正確に確認し、顧客に適切なアドバイスができるよう、要件の詳細、確認方法、誓約書・略歴書の作成実務まで、実務目線で詳しく解説します。
![誠実性・欠格要件]()
この記事で使う主な書式
誠実性・欠格要件の確認には、「(特典付き)行政書士開業セット」の中の以下の書式を使用します。これらの書式で、役員等が欠格要件に該当しないことを誓約し、証明します。
誓約書
- 010 誓約書(様式第6号) - 欠格要件に該当しないことを誓約する書式。法人の場合:役員等全員が記名押印、個人の場合:本人と支配人が記名押印
略歴書(経管証明に使用)
- 013 常勤役員等略歴書(様式第7号別紙)
- 014 常勤役員等略歴書(様式第7号の2別紙1)
- 015 常勤役員等を直接に補佐する者の略歴書(様式第7号の2別紙2) - 経管の証明で使用するが、略歴から欠格要件該当性も確認
要件確認用チェックリスト
- チェックリスト001(一般建設業許可要件チェックリスト)の該当部分
- チェックリスト002(特定建設業許可要件チェックリスト)の該当部分
誠実性・欠格要件の確認は、「見落とし」が最大のリスクです。特に欠格要件は11項目にわたり、法人の場合は役員等全員について確認が必要です。チェックリストを使って、漏れなく確認することが極めて重要です。
1. 誠実性要件とは
![誠実性・欠格要件]()
1-1. 誠実性の定義
建設業法第7条第3号では、「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」が許可要件とされています。
「不正な行為」とは:
- 請負契約の締結又は履行に際しての詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為
「不誠実な行為」とは:
- 請負契約に違反する行為
- 工事内容、工期等について請負契約に違反する行為
- 請負代金の支払いを不当に遅延する行為
1-2. 誠実性要件の確認対象者
法人の場合:
- 役員等(取締役、執行役、業務を執行する社員等)
- 政令で定める使用人(支配人、営業所長等)
個人の場合:
1-3. 誠実性要件の実務上のポイント
重要な考え方:
誠実性要件は、「不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者」を排除する要件です。つまり、過去に実際に不正・不誠実な行為を行った者や、そのおそれが明らかな者が対象となります。
実務上の判断:
実務上は、以下のような場合に「不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者」と判断される可能性があります:
- 建設業法違反により営業停止処分を受けた者
- 請負契約に関する不正行為により刑事処分を受けた者
- 重大な契約違反を繰り返している者
通常の申請では、誓約書(様式第6号)で誠実性を誓約することで、要件を満たすものとされます。
2. 欠格要件とは
![誠実性・欠格要件]()
2-1. 欠格要件の趣旨
建設業法第8条では、建設業の許可を受けることができない者(欠格事由)が定められています。これは、建設業者としての信頼性・適格性を確保するため、過去の法令違反歴、刑罰歴、暴力団関係者等を排除する規定です。
2-2. 欠格要件の確認対象者
法人の場合:
- 役員等(取締役、執行役、業務を執行する社員等)
- 政令で定める使用人(支配人、営業所長等)
- 法人そのもの
個人の場合:
2-3. 欠格要件に該当する期間
多くの欠格事由には「5年間」という期間制限があります。
5年間の起算日:
- 許可取消しの場合:取消しの日
- 廃業届出の場合:届出の日
- 刑の執行の場合:刑の執行を終わった日、または執行を受けることがなくなった日
この期間が経過すれば、欠格事由に該当しなくなります。
3. 欠格要件の詳細(11項目)
建設業法第8条に規定される欠格事由を、詳しく解説します。
![誠実性・欠格要件]()
3-1. 第1号:成年被後見人、被保佐人、破産者
欠格事由:
- 成年被後見人、被保佐人
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
実務のポイント:
- 成年被後見人・被保佐人:後見・保佐開始の審判を受けている者
- 破産者:破産手続開始決定を受け、免責許可決定や10年経過により復権していない者
確認方法:
- 成年被後見人・被保佐人:登記事項証明書(後見登記等)で確認
- 破産者:本人からの聞き取り、略歴書での確認
![誠実性・欠格要件]()
3-2. 第2号:不正手段による許可取得等
欠格事由:
- 不正の手段により許可を受けたこと等により、その許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
実務のポイント:
- 「不正の手段」には、虚偽申請、重要事項の隠蔽等が含まれる
- 許可取消処分を受けた場合、5年間は再取得不可
確認方法:
3-3. 第3号:許可取消しを免れるための廃業届出
欠格事由:
- 許可の取消しを免れるために廃業の届出をした者で、届出の日から5年を経過しない者
実務のポイント:
- 許可取消処分が予想される場合に、先に廃業届を出した者を対象とする
- 単なる事業廃止による廃業届は対象外
確認方法:
3-4. 第4号:営業停止処分期間中の者
欠格事由:
- 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、または危害を及ぼすおそれが大であるとき、もしくは請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
実務のポイント:
- 営業停止処分を受けている期間中は、許可を取得できない
- 営業停止期間が終了すれば、欠格事由に該当しなくなる
確認方法:
3-5. 第5号:禁錮以上の刑
欠格事由:
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
実務のポイント:
- 「禁錮以上の刑」には、禁錮刑、懲役刑、死刑が含まれる(罰金刑は含まれない)
- すべての犯罪が対象(建設業法違反に限らない)
- 執行猶予期間中は欠格事由に該当する
確認方法:
3-6. 第6号:特定の法令違反による罰金刑
欠格事由:
- 建設業法、建築基準法、労働基準法等の特定の法律の規定に違反して、または刑法等の一定の罪を犯して、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
対象となる主な法律:
- 建設業法
- 建築基準法
- 宅地造成及び特定盛土等規制法
- 労働基準法
- 職業安定法
- 労働者派遣法
- 刑法(傷害、暴行、脅迫、背任等の罪)
- 暴力行為等処罰に関する法律
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
実務のポイント:
- 特定の法令違反による「罰金刑」が対象
- すべての罰金刑が対象ではなく、上記法律に違反した場合に限定
確認方法:
![誠実性・欠格要件]()
3-7. 第7号:暴力団員等
欠格事由:
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員または同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
実務のポイント:
- 現在暴力団員である者
- 暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
確認方法:
- 誓約書(様式第6号)での誓約
- 警察への照会(都道府県により運用が異なる)
3-8. 第8号:未成年者(法定代理人が欠格事由該当)
欠格事由:
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記第1号から第7号までのいずれかに該当する者
実務のポイント:
- 未成年者本人ではなく、その法定代理人が欠格事由に該当する場合
確認方法:
- 法定代理人についても、上記第1号から第7号までを確認
3-9. 第9号:法人の役員等が欠格事由該当
欠格事由:
- 法人でその役員等または政令で定める使用人のうち、上記第1号から第7号までのいずれかに該当する者がある者
役員等の範囲:
- 取締役(監査役を除く)
- 執行役
- 業務を執行する社員
- 持分会社の業務執行社員
政令で定める使用人:
実務のポイント:
- 法人の場合、役員等全員および営業所長について、欠格要件を確認
- 1人でも欠格事由に該当する者がいれば、法人全体が許可を受けられない
確認方法:
- 誓約書(様式第6号)に役員等全員が記名押印
- 略歴書での確認
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3-10. 第10号:個人の使用人が欠格事由該当
欠格事由:
- 個人で政令で定める使用人のうち、上記第1号から第7号までのいずれかに該当する者がある者
政令で定める使用人:
実務のポイント:
- 個人事業主の場合、本人だけでなく、支配人・営業所長についても確認
確認方法:
3-11. 第11号:暴力団員等が事業活動を支配
欠格事由:
「事業活動を支配する」とは:
- 暴力団員等が法人の役員等として経営に実質的に関与している場合
- 暴力団員等が株主、出資者として実質的に支配している場合
実務のポイント:
- 形式上の役員でなくても、実質的に支配している場合は該当
確認方法:
- 誓約書での誓約
- 警察への照会(都道府県により運用が異なる)
4. 誠実性・欠格要件の確認方法
4-1. 誓約書(様式第6号)による確認
010 誓約書(様式第6号)は、誠実性・欠格要件を確認する最も重要な書式です。
記載内容:
- 欠格要件(建設業法第8条各号)に該当しないことの誓約
- 暴力団員等でないことの誓約
- 暴力団員等と密接な関係を有しないことの誓約
記名押印が必要な者:
法人の場合:
- 役員等全員(取締役、執行役、業務を執行する社員等)
- 政令で定める使用人(支配人、営業所長等)
個人の場合:
実務のポイント:
- 役員等全員の記名押印が必要(監査役は除く)
- 営業所長が複数いる場合は、全員の記名押印が必要
- 1人でも記名押印が欠けると、誓約書として不備となる
4-2. 略歴書による確認
経管の証明で使用する略歴書(013〜015)には、職歴だけでなく、欠格要件に該当する事実がないかも記載します。
確認すべき事項:
- 過去の建設業許可の取消し歴
- 営業停止処分歴
- 刑事処分歴(禁錮以上の刑、特定法令違反による罰金刑)
- 暴力団員歴
記載方法:
- 該当する事実がある場合は、その内容と年月日を記載
- 該当しない場合は、「該当なし」と記載
4-3. 登記事項証明書等による確認
成年被後見人・被保佐人の確認:
- 後見登記等に関する登記事項証明書(法務局発行)で確認
- 申請時に添付が必要(発行後3ヶ月以内)
破産者の確認:
- 本人からの聞き取り
- 略歴書での確認
- 市区町村発行の身分証明書で確認(発行後3ヶ月以内)
4-4. チェックリストによる確認
チェックリスト001または002を使用して、漏れなく確認します。
確認項目:
- 誓約書に役員等全員が記名押印しているか
- 略歴書に欠格要件該当事実の記載があるか(ある場合は5年経過しているか)
- 登記事項証明書、身分証明書を添付しているか
- 営業所長についても確認しているか
![誠実性・欠格要件]()
5. 誓約書・略歴書の作成実務
5-1. 誓約書(様式第6号)の作成ポイント
作成手順:
- 役員等の範囲を確認 - 登記簿謄本で役員を確認、営業所長を確認
- 誓約書を作成 - 役員等全員の氏名を記載、各自が記名押印
- 暴力団関係の誓約を確認 - 暴力団員でないこと、暴力団員等と密接な関係を有しないこと
注意点:
- 記名押印は実印でなくても可(認印可)
- ただし、申請書本体と同じ印鑑を使用することが望ましい
- 役員等の人数が多い場合は、別紙形式も可
5-2. 略歴書での欠格要件の記載
記載が必要な場合:
- 過去に建設業許可の取消しを受けたことがある
- 営業停止処分を受けたことがある
- 禁錮以上の刑に処せられたことがある
- 特定法令違反により罰金刑に処せられたことがある
記載例:
平成○年○月 建設業法違反により○○県知事から営業停止処分(6ヶ月)
平成○年○月 営業停止期間満了
注意点:
- 該当事実がある場合、隠さず正確に記載
- 5年経過しているかを確認
- 5年経過していない場合は、許可を受けられない
5-3. 登記事項証明書・身分証明書の取得
後見登記等に関する登記事項証明書:
- 発行機関:法務局
- 有効期限:発行後3ヶ月以内
- 取得方法:窓口、郵送、オンライン
身分証明書:
- 発行機関:本籍地の市区町村
- 有効期限:発行後3ヶ月以内
- 記載内容:成年被後見人・被保佐人でないこと、破産者でないこと
- 取得方法:窓口、郵送
実務のポイント:
- 役員等全員分が必要
- 本籍地が遠方の場合は、郵送で取得可能
- 申請直前に取得すると、有効期限切れのリスクを減らせる
6. 実務ケーススタディ
実際の事例を通じて、誠実性・欠格要件の確認プロセスを学びましょう。
ケース1:株式会社(取締役3名)の新規許可申請
顧客の状況:
- 株式会社(取締役3名、監査役1名)
- 営業所:本店のみ
- 営業所長は代表取締役が兼務
確認プロセス:
- 誓約書の作成 - 取締役3名全員が記名押印(監査役は不要)、営業所長は代表取締役なので、別途記名押印は不要
- 略歴書の確認 - 取締役3名の略歴書(経管・専技証明で使用)を確認、欠格要件該当事実がないことを確認
- 登記事項証明書・身分証明書の取得 - 取締役3名分を取得
ポイント:
株式会社の場合、監査役は役員等に含まれないため、誓約書への記名押印は不要です。
ケース2:過去に営業停止処分を受けた役員がいる場合
顧客の状況:
- 株式会社(取締役2名)
- 取締役Aは、7年前に別の会社で建設業法違反により営業停止処分(3ヶ月)を受けた経験がある
確認プロセス:
- 欠格要件該当性の確認 - 営業停止処分から7年経過 → 欠格要件に該当しない、ただし、略歴書には記載が必要
- 略歴書への記載
平成○年○月 △△建設株式会社取締役として建設業法違反により○○県知事から営業停止処分(3ヶ月)
平成○年○月 営業停止期間満了
- 誓約書の作成 - 取締役2名全員が記名押印、欠格要件に該当しないことを誓約
ポイント:
営業停止処分を受けたこと自体は、期間満了後は欠格事由に該当しませんが、略歴書には正確に記載する必要があります。
ケース3:個人事業主(支配人あり)の新規許可申請
顧客の状況:
確認プロセス:
- 誓約書の作成 - 本人と支配人の2名が記名押印
- 登記事項証明書・身分証明書の取得 - 本人と支配人の2名分を取得
- 略歴書の確認 - 本人の略歴書を確認、欠格要件該当事実がないことを確認
ポイント:
個人事業主の場合も、支配人を選任する場合は、支配人についても欠格要件の確認が必要です。
ケース4:営業所長が複数いる場合
顧客の状況:
- 株式会社(取締役3名)
- 本店と支店の2営業所
- 本店:代表取締役が営業所長兼務
- 支店:従業員Xを営業所長に選任
確認プロセス:
- 誓約書の作成 - 取締役3名 + 支店営業所長X = 計4名が記名押印
- 登記事項証明書・身分証明書の取得 - 取締役3名 + 支店営業所長X = 計4名分を取得
- 略歴書の確認 - 取締役3名の略歴書を確認、支店営業所長Xについても、欠格要件該当事実がないか確認
ポイント:
営業所長は「政令で定める使用人」に該当するため、従業員であっても欠格要件の確認対象です。
![誠実性・欠格要件]()
まとめ
本記事では、建設業許可の第3・第4要件である誠実性・欠格要件について詳しく解説しました。
押さえるべき重要ポイント
誠実性要件は誓約書で確認
- 不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者を排除
- 誓約書(様式第6号)で誓約
欠格要件は11項目
- 成年被後見人、被保佐人、破産者
- 許可取消し・廃業届出から5年未経過
- 営業停止期間中
- 禁錮以上の刑(5年未経過)
- 特定法令違反の罰金刑(5年未経過)
- 暴力団員等
- 未成年者の法定代理人が該当
- 法人の役員等が該当
- 個人の使用人が該当
- 暴力団員等が事業活動を支配
確認対象者に注意
- 法人:役員等全員 + 営業所長
- 個人:本人 + 支配人・営業所長
- 1人でも該当すれば許可不可
5年間の期間制限
- 多くの欠格事由は「5年間」の期間制限
- 起算日:許可取消日、廃業届出日、刑の執行終了日等
必要書類
- 誓約書(様式第6号):役員等全員が記名押印
- 後見登記等に関する登記事項証明書(発行後3ヶ月以内)
- 身分証明書(発行後3ヶ月以内)
- 略歴書:欠格要件該当事実を正確に記載
実務で成功するための必須ツール
誠実性・欠格要件の確認には、以下の書式が不可欠です:
要件確認:
- チェックリスト001またはチェックリスト002(誠実性・欠格要件部分)
証明書式:
- 010 誓約書(様式第6号)
- 013-015 略歴書(経管証明で使用、欠格要件も確認)
添付書類:
これらの書式を正確に作成し、役員等全員について漏れなく確認することが、審査通過の鍵です。特に、誓約書への記名押印漏れ、登記事項証明書・身分証明書の取得漏れは、審査で必ず指摘されます。
20年以上新人行政書士に使われ続けている「
行政書士開業セット」の書式集については、以下のページで詳しく解説しています。
これらの資料には、010(様式第6号)の詳細な記入例、役員等の範囲の判断方法、略歴書での欠格要件記載例など、実務で即使えるノウハウが凝縮されています。
![誠実性・欠格要件]()
次に読むべき記事
誠実性・欠格要件を理解したら、次は第5要件を学びましょう:
- 記事5:財産的基礎の要件と財務諸表の作成実務
- 記事6:社会保険加入要件の詳細