
建設業許可の6要件の第2要件が「営業所ごとの専任技術者の設置」です。専任技術者(以下「専技」)は、建設工事の適正な施工を技術面から担保するために、各営業所に配置が義務付けられています。
専技要件は、一般建設業と特定建設業で大きく異なり、特定建設業では1級国家資格や指導監督的実務経験が求められるなど、要件が厳格化されます。また、実務経験による証明には10年(指定学科卒業者は短縮あり)という長期間の経験が必要で、その証明方法も複雑です。
本記事では、新人行政書士が専技要件を正確に理解し、顧客に適切なアドバイスができるよう、資格・実務経験・指定学科による証明方法、そして令和7年2月改正で変更された監理技術者の配置基準まで、実務目線で詳しく解説します。

専技要件の確認と証明には、「(特典付き)行政書士開業セット」の中の以下の書式を使用します。これらの書式を正確に作成し、適切な添付書類を揃えることが、許可申請成功の鍵となります。
専技要件は、「どの証明方法を使うか」の判断が非常に重要です。国家資格があれば話は早いですが、資格がない場合は実務経験10年の証明が必要で、その裏付け資料の収集に時間がかかります。これらの書式を正確に作成できるかが、審査通過の分かれ目です。

専任技術者(専技)とは、営業所に常勤し、その営業所で請け負う建設工事について技術上の管理を行う者です。
なぜ専技が必要か?
建設工事は高度な専門技術を要するため、適切な技術的判断ができる人材が営業所に常駐していることが必要です。専技は、請負契約の締結から施工、完成に至るまで、技術面での責任を担います。
専技の要件が求めるもの:

重要なポイント:
具体例:
専技は経管と兼任できます。ただし、両方の要件を満たす必要があります。
兼任の条件:
実務のポイント:
中小企業では、社長が経管と専技を兼任するケースが多くあります。
一般建設業の専技になるには、以下の3つのパターンのいずれかを満たす必要があります。


要件:
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、国土交通大臣が定める学科を修めて高等学校を卒業後5年以上、専門学校を卒業後3年以上、または大学を卒業後3年以上の実務経験を有する者と同等以上の知識及び技術を有する者として国土交通大臣が認定した者
具体的には:
主要な国家資格の例:
| 資格名 | 対応業種 |
|---|---|
| 1級建築施工管理技士 | 建築一式 |
| 2級建築施工管理技士(建築) | 建築一式 |
| 1級土木施工管理技士 | 土木一式 |
| 2級土木施工管理技士(土木) | 土木一式 |
| 1級電気工事施工管理技士 | 電気 |
| 2級電気工事施工管理技士 | 電気 |
| 1級管工事施工管理技士 | 管 |
| 2級管工事施工管理技士 | 管 |
証明方法:
実務のポイント:
国家資格による証明が最も簡単で確実です。資格があれば、実務経験の証明は不要です。

要件:
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し、10年以上の実務経験を有する者
実務経験とは:
建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
実務経験に含まれるもの:
実務経験に含まれないもの:
証明方法:
実務のポイント:
実務経験10年の証明は、裏付け資料の収集が大変です。契約書、注文書、請求書等、実際に建設工事に従事していたことを証明する資料を可能な限り揃える必要があります。

要件:
国土交通大臣が定める学科を修めて卒業後、一定期間以上の実務経験を有する者
必要な実務経験年数:
指定学科とは:
各建設業種に対応した工学系の学科です。
主要な指定学科の例:
| 建設業種 | 指定学科 |
|---|---|
| 土木一式 | 土木工学、都市工学、衛生工学等 |
| 建築一式 | 建築学、都市工学等 |
| 大工 | 建築学、林学等 |
| 電気 | 電気工学、電気通信工学等 |
| 管 | 土木工学、建築学、機械工学、衛生工学等 |
証明方法:
実務のポイント:
指定学科を卒業していれば、実務経験が10年から3年(大卒)または5年(高卒)に短縮されます。ただし、卒業証明書に学科名が明記されている必要があります。
1人の専技が複数業種を兼ねることができます。
兼任の条件:
具体例:
実務のポイント:
複数業種を兼任する場合は、006(様式第1号別紙4)で明確に記載する必要があります。
特定建設業の専技は、一般建設業よりも厳格な要件が課されます。

特定建設業の専技になるには、以下のいずれかを満たす必要があります。
ルート@:1級国家資格者
ルートA:一般の専技要件+指導監督的実務経験

定義:
建設工事の設計、施工の全般にわたって、工事現場主任または工事現場監督者のような資格で、工事の技術面を総合的に指導監督した経験
対象となる工事:
重要:令和7年2月改正について
指導監督的実務経験の対象となる工事の金額基準は、令和7年2月改正でも変更されていません。一貫して4,500万円以上が基準です。
混同しやすい他の金額基準:
令和7年2月1日の建設業法施行令改正では、別の金額基準が引き上げられましたが、指導監督的実務経験の基準は変更されていません。
| 項目 | 金額基準 | 令和7年2月改正 |
|---|---|---|
| 指導監督的実務経験の対象工事 | 4,500万円以上 | 改正なし |
| 特定建設業許可が必要な下請代金額 | 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 改正あり(4,500万円→5,000万円) |
| 専任監理技術者の配置が必要な工事 | 4,500万円以上(建築一式9,000万円以上) | 改正あり(4,000万円→4,500万円) |
証明方法:
実務のポイント:
指導監督的実務経験は、元請として大規模工事を担当した経験が必要です。下請工事での経験は認められません。金額基準は「4,500万円以上」で、令和7年2月改正でも変更されていない点に注意してください。

| 項目 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 国家資格 | 1級・2級施工管理技士 1級・2級建築士等 |
1級施工管理技士 1級建築士等 (2級は不可) |
| 実務経験 | 10年 (指定学科卒業で短縮可) |
不可 |
| 指導監督的 実務経験 |
不要 | 一般の専技要件 + 4,500万円以上の工事で 2年以上の経験 |
重要なポイント:
特定建設業の専技は、原則として1級国家資格が必要です。実務経験のみでは特定建設業の専技にはなれません(指導監督的実務経験との組み合わせが必要)。
確認すべき事項:
注意点:
各業種に対応する国家資格は、国土交通省告示で定められています。主要な資格は前述の通りですが、詳細はチェックリスト001または002の専技部分に記載されています。
実務のポイント:
顧客が持っている資格が、申請する業種に対応しているか必ず確認してください。対応していない資格では専技になれません。
計算方法:
実務経験にカウントできる期間:
実務経験にカウントできない期間:
018 実務経験証明書(様式第9号)の記入は、実務経験証明の核心部分です。
記入項目:
1. 被証明者の情報
2. 実務経験の期間と内容
3. 証明者の情報
記入例:
期間:令和10年4月〜令和15年3月(5年間)
建設工事の種類:建築一式工事
工事の内容:住宅新築工事における大工作業、型枠工事、内装工事
事業所名:○○建設株式会社
証明者:代表取締役 ○○○○(雇用主)
実務のポイント:
実務経験を証明するには、客観的な裏付け資料が必要です。
主要な裏付け資料:
1. 工事請負契約書
2. 注文書・請書
3. 請求書・領収書
4. 工事台帳
5. 健康保険証・雇用保険被保険者証
6. 源泉徴収票・給与明細
実務のポイント:
10年分の裏付け資料を完璧に揃えるのは困難な場合が多いです。可能な限り多くの資料を収集し、途切れなく実務経験があったことを証明する努力が必要です。
指定学科卒業者は、実務経験が短縮されますが、その分厳格な証明が求められます。
必要書類:
注意点:

特定建設業の専技になるために必要な指導監督的実務経験の証明は、一般の実務経験証明よりも厳格です。
019 指導監督的実務経験証明書(様式第10号)は、特定建設業専技の証明に必須です。
記入項目:
1. 被証明者の情報
2. 指導監督した工事の詳細
3. 証明者の情報
記入例:
工事名:○○マンション新築工事
工事場所:東京都○○区○○
注文者:○○不動産株式会社
請負代金:80,000千円
工期:令和3年4月〜令和4年3月
従事期間:令和3年4月〜令和4年3月(1年間)・監理技術者
指導監督の内容:設計図書の検討、施工計画の立案、下請業者の技術指導、工程管理、品質管理、安全管理等の統括
実務のポイント:
必要書類:
1. 工事請負契約書
2. 施工体制台帳
3. 監理技術者資格者証
4. 工事経歴書、工事台帳
注意点:
専技は、その営業所に「専ら従事」していることが必要です。
専任とは:
専任性が認められないケース:
例外:
必要書類:
1. 健康保険証の写し
2. 住民票
3. 雇用契約書
注意点:

工事現場に配置する監理技術者の基準も、令和7年2月1日に改正されました。
専任監理技術者の配置が必要な工事:
| 工事種別 | 改正前(〜令和7年1月31日) | 改正後(令和7年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 請負代金4,000万円以上 | 請負代金4,500万円以上 |
| 建築一式工事 | 請負代金8,000万円以上 | 請負代金9,000万円以上 |
改正の背景:
建設工事費の高騰、人件費・物価上昇に対応し、現行の基準が実態と乖離していることから見直されました。
実務への影響:
型枠工事・鉄筋工事については、特定専門工事として特例が設けられています。
特定専門工事とは:
特定建設業者が元請として受注した工事のうち、型枠工事または鉄筋工事について、一定の条件を満たす場合に、下請業者の主任技術者の配置を不要とすることができる制度
対象上限の改正:
| 項目 | 改正前(〜令和7年1月31日) | 改正後(令和7年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 特定専門工事(型枠・鉄筋)の下請代金額上限 | 4,000万円未満 | 4,500万円未満 |
実務上の意味:
型枠工事・鉄筋工事については、下請代金額が4,500万円未満であれば、特定建設業許可を持つ元請が一定の条件下で下請業者の主任技術者の配置を不要とすることができます。
注意:
この制度は、元請の監理技術者の設置義務を免除するものではなく、下請業者の主任技術者の配置を不要とする制度です。
令和7年2月1日の改正により、以下の金額基準が変更されました:
| 項目 | 金額基準 | 令和7年2月改正 |
|---|---|---|
| 指導監督的実務経験の対象工事 | 4,500万円以上 | 改正なし |
| 特定建設業許可が必要な下請代金額 | 5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 改正あり(4,500万円→5,000万円) |
| 専任監理技術者の配置が必要な工事 | 4,500万円以上(建築一式9,000万円以上) | 改正あり(4,000万円→4,500万円) |
| 特定専門工事の下請代金額上限 | 4,500万円未満 | 改正あり(4,000万円→4,500万円) |
重要な注意点:
「特定建設業許可が必要な下請代金額」と「指導監督的実務経験の対象工事」は異なる金額基準です。前者は5,000万円以上(改正後)、後者は4,500万円以上(改正なし)です。混同しないよう注意してください。

実際の事例を通じて、専技要件の判断プロセスを学びましょう。
顧客の状況:
判断プロセス:
使用書式:
ポイント:
国家資格があれば証明は簡単です。資格者証の写しがあれば十分です。
顧客の状況:
判断プロセス:
使用書式:
ポイント:
実務経験の証明は、裏付け資料の収集が鍵です。10年分すべて揃えるのは困難な場合が多いですが、可能な限り多くの資料を集めます。
顧客の状況:
判断プロセス:
使用書式:
ポイント:
指定学科卒業者は、実務経験が10年から3年に短縮されます。卒業証明書に学科名が明記されていることが必須です。
顧客の状況:
判断プロセス:
使用書式:
ポイント:
特定建設業の専技は、1級資格がない場合は指導監督的実務経験が必要です。4,500万円以上の元請工事での経験が必須です。

本記事では、建設業許可の第2要件である専任技術者について詳しく解説しました。
一般と特定で要件が大きく異なる
証明方法は3パターン
実務経験の証明は裏付け資料が鍵
令和7年2月改正の影響
混同しやすい金額基準に注意
専技要件の確認と証明には、以下の書式が不可欠です:
要件確認:
証明書式:
これらの書式を正確に作成し、適切な裏付け資料を添付することが、審査通過の鍵です。特に、018(様式第9号)の実務経験証明は、記入内容と裏付け資料の整合性が厳しくチェックされます。
これらの資料には、017(様式第8号)・018(様式第9号)・019(様式第10号)の詳細な記入例、審査でよく指摘される事項、実務経験の裏付け資料の集め方など、実務で即使えるノウハウが凝縮されています。

専技要件を理解したら、次は第3・第5要件を学びましょう: