
行政書士試験の学習を進めていくと、必ず立ちはだかる壁があります。それが「国家賠償法」と「損失補償」という2つの制度です。
多くの受験生が「どちらも損害を補う制度だから似たようなものでは?」と混同してしまいますが、これは大きな間違いです。この2つの制度は、行政の行為が「違法」か「適法」かという一点で明確に分かれるまったく異なる仕組みなのです。
本試験では、この区別があいまいなまま問題に取り組むと、致命的な失点につながります。逆に言えば、「違法」と「適法」の区別さえ押さえておけば、この分野は確実な得点源になります。
この記事では、合否を分けるこの2つの制度について、試験対策の核心となるポイントを徹底解説します。
まず、多くの受験生がつまずく理由を明確にしておきましょう。

国家賠償も損失補償も、どちらも「行政によって生じた損害を金銭で補う」という点では共通しています。そのため、表面的には似た制度に見えてしまうのです。
しかし、試験で問われるのは「その行政の行為が違法だったのか、それとも適法だったのか」という本質的な違いです。この区別ができないと、どれだけ細かい知識を詰め込んでも正解にたどり着けません。
【重要】2つの制度を分ける決定的な違い
つまり、国家賠償は「やってはいけないことをやった」という責任追及であり、損失補償は「適法だけど特定の人に犠牲を強いた」という公平性の調整なのです。
国家賠償法は、行政の違法な行為によって国民が損害を被った場合に、国や地方公共団体に賠償責任を負わせる法律です。
この制度には2つの柱があり、それぞれ責任の対象が異なります。試験ではどちらの責任が問われているのかを瞬時に判断できなければなりません。
国賠法1条は、公務員が職務を行う上で故意または過失によって国民に損害を与えた場合の責任を定めています。
責任が成立するための3つの要件
【試験対策の急所】賠償責任を負うのは誰?
賠償責任を負うのは国または地方公共団体です。公務員個人は直接責任を負いません。ただし、国が賠償した後に故意または重過失のある公務員個人に対して請求する求償権が認められています。

国賠法2条は、道路、河川、学校、公園などの公の営造物の設置または管理に欠陥があり、それによって損害が生じた場合の責任を定めています。
1条との決定的な違い
試験では、営造物の範囲(信号機や公用車は含まれるか?など)と、原因者への求償権に関する出題が目立ちます。条文知識を正確に整理しておきましょう。

損失補償は、国家賠償とは根本的に異なる性質を持つ制度です。行政の行為自体は「適法」であるにもかかわらず、特定の国民が財産権について特別な犠牲を強いられた場合に、公平の観点からその損失を補償します。

損失補償の根拠は、日本国憲法第29条3項にあります。
憲法29条3項
「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」
この規定から導かれる損失補償の成立要件は以下の通りです。
「正当な補償」の範囲については学説・判例で議論がありますが、原則として財産的損害について完全な補償がされるべきと解されています。
試験では、補償の範囲(営業損失は含まれるか?など)や、補償の時期(事前補償か事後補償か)といった論点が出題されます。
損失補償の最も代表的な例が、土地収用法に基づく土地収用です。

公共事業(道路建設など)のために、行政が強制的に私有地を取得する場合、その土地所有者は適法な行政行為によって財産権を失うことになります。この場合、土地収用法に基づいて正当な補償が行われます。
【頻出論点】補償規定がない場合はどうなる?
個別の法律に補償規定がない場合でも、憲法29条3項を根拠に直接補償請求できるか?という論点は試験頻出です。判例では、直接請求できるのは例外的であり、まずは個別法の規定を確認すべきとしています。
ここまでの内容を、試験直前に確認できる比較表にまとめます。この表を頭に叩き込んでおけば、本試験で迷うことはありません。
| 項目 | 国家賠償 | 損失補償 |
|---|---|---|
| 行政行為の性質 | 違法な行為 | 適法な行為 |
| 制度の目的 | 損害の賠償(責任追及) | 特別な犠牲の補償(公平の実現) |
| 根拠法 | 国家賠償法 | 憲法29条3項、個別法 |
| 故意・過失の要否 | 1条は必要、2条は不要 | 不要(無過失責任) |
| 責任の性質 | 過失責任(2条は無過失責任的) | 無過失責任 |
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特に、行政裁量の逸脱・濫用が違法性の判断でどう扱われるか、営造物責任における安全性の基準はどこにあるのか、といった実践的な論点を、判例を通じて理解することができます。
行政書士試験において、国家賠償法と損失補償の分野は「違法」と「適法」の区別に全てがかかっています。
この一点さえ明確に理解していれば、複雑に見える問題も瞬時に解くことができます。逆に、この区別があいまいなままでは、どれだけ細かい知識を詰め込んでも正解にたどり着けません。
試験対策の核心
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